ハッと目が覚めて窓を開けるとやはり路面は濡れていた。
ここ数日は夜ごとに雨が降っている気がする。降水量の極めて少なかった先月と比べて、今月はしっとりした日々が続いているようだ。
バルコニーの植物たちは比較的元気そう。冬にうっかり葉を落としてしまったローレルも、小さな新芽を芽吹かせている。
沖縄を直撃した台風は、次なる目標を南九州に決めたようだ。天気アプリに登録した宮崎の街には、青い傘がしなった不穏なマーク。夏休みを取って行く予定だった。台風の到来を予期して取りやめた。
思えば、昨年まで九州自体にすら行ったことのない人生だった。それが今や毎年のように行くようになっている。そのほかのエリアもそう。京都や大阪、名古屋あたりへも気軽に行くようになったのはここ数年の話。
仕事の都合もあるが、何もなかろうが行く。書き物の仕事がたまってくると、名駅前やミナミあたりの安いビジネスホテルを取って3〜4日こもる。その間、街に繰り出すでもない。知らない街で暮らすように過ごすと、自然とものを書く仕事は進むのだ。
北千住で暮らすようになった当初は、その効果が日常にあった。
勢いで住むことにしたシェアハウス。雑多な住民たちと昼夜語るようにして暮らしながら、その年いちばん大きな仕事は着実に進んでいた。そういう効果が街には、街での暮らしにはあるような気がする。
シェアハウスを出て、1Kの部屋で暮らすようになった。この部屋での暮らしは快適。だが仕事の進みやすい感じはしない。街との接点みたいなものが希薄だからだろうか。
カレンダーが宮崎空港ゆきの航空便に乗る時間を通知した。削除し忘れた予定を既読にして、わたしは丸の内の職場へ向かう千代田線に乗った。