新しい住まいである北千住駅徒歩10分のマンションに暮らす住民はみな静かだ。
家に居て、物音を聴くことはほとんどない(満室ではあるようだ)。
ごく稀にエントランスですれ違ったり、エレベーターで相乗りになる場合も挨拶は会釈程度。会話が生まれることはこれまでに一度もない。
ゴミ収集所はいつもきれいに保たれている。
単身もいれば、二人で暮らす部屋もあるようだった。ただし、子どもの声はまだ耳にしていない。
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都内で、ギリギリ駅チカといえる、新築のマンションを自分が借りるとは思いもしなかった。
年間10万円で古民家を借りて自分で直したり、「うちの裏空いてるよ」って知り合いの敷地に立つ離れを借りたりしていたわたしだ。
つい最近まで住んでいたシェアハウスの家賃は36,000円/月。全室ドミトリーで自室はなかった。
新居は、金額面だけでいえば馬鹿みたいに安い。
馬鹿みたいに長いフリーレント期間に、馬鹿みたいに少ない初期費用。
近隣で同じ広さの(といっても1K、25㎡程度)物件を借りるのと比べると、2年間だけ住むなら最も安かった。
大学を出て以来、2年以上同じところに住んだことがない。
2年先のことはわからないが、まあなにかしらライフスタイルは変わっているだろうとは思う。
最新の設備が整った、ごくごくリーズナブルな部屋に暮らしている。
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シェアハウスの先代住人がいま暮らしているというかみいけ木賃文化ネットワーク。
「足りないものはまちを使う」というコンセプトは当たり前のことを言っているようで、その実は結構面白いと思った。
どう工夫しても、どこかで“まちを使う”という行為は暮らしの上では必須だろう。
その上で、「この家にはこれこれがありません」と素直に受け入れる姿勢はある意味で誠実に思える。
不足を歓迎するマインドは精神的にヘルシー。
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テレワークの一日。仕事の合間に北千住の民たちとのやり取り。
空き物件をシェア型本屋にしようという企み。住んでいたシェアハウスの愚痴。週末みんなで映画を観ようという相談。飲み屋で出会った子から行きつけの店情報。海外に引っ越すという知らせ。
己の立てる音しかしない部屋で、賑やかさをまちから補給しているな、としみじみ思った。