串カツの懐(2023.08.07)

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「市長」というあだ名の友人がいる。

関係性の距離はさておき、周りに3人はいる。ごく小さな、わたしの人間関係の中で3人いる市長の存在。

実際に市長職を経験したことのない人でこの人数だ。どちらかといえばメジャーなあだ名と言ってよいと思う。

 

いや、そうなのだろうか。本当に「市長」名称は多いのだろうか。

TwitterもといXで「市長」と調べてみる。おびただしい数の、本物の市長アカウントが出てきた。

ざっと流して見ても、あだ名っぽい「市長」は2アカウントくらいしか見当たらない。あだ名の「市長」より、市民に選ばれた職業「市長」の数のほうが圧倒的に多かった。本日の市町村数は全国で1,718、うち792が市だ。

そりゃそうだろう。

 

・・・

 

この日はそんな市長主催の飲み会があった。

バーチャル町内会である「千住浪漫シティ」。市長の声かけによって生まれた集い。屋上のあるシェアハウスで、ゆるいビアガーデンが開かれていた。

金麦で乾杯。

川沿いの屋上を、昼の熱気を知らない涼やかな風が抜ける。直前にスコールのような雨が突然降って、そしてすぐ止んだ。むっと立ち上る雨上がりのにおいが、隅田川越しの夜風と相まってどこか東南アジアのような空気。

このバーチャル町内会の取り組みがはじまってから、わたしの千住暮らしはますます面白いものになっている。市長(あだ名)にはいつもありがとうと感謝を伝えたい。

 

・・・

 

もうまもなく千住を離れる友人の顔を見つけた。共通の友人たちと1杯だけ外で飲もうとなり、街へ繰り出すことに。

21時過ぎの千住ほんちょう商店街、すでに大方の店がシャッターを下ろしている。目当ての店もクローズ直前で断念。通り沿いの串カツ田中へ駆け込む。

ほぼ毎日のように通るこの串カツ田中、実はこれまで入ったことがなかった。聞けば同様の声は多い。うっかり初心者ばかりで来てしまった。よく来るという先達に従って、お行儀よくガリ酎を楽しむ。

「串カツ田中にいるよ」とLINEグループの各所に投げていたところ、最終的には7人くらいの規模になった。食べたいものを食べたい量だけオーダーできる串カツ田中は、そんなわれわれにもぴったりだった。

 

そういえば、つい最近梅田で串カツ屋に入ったなと思い出す。

あれは先月、いや先々月か。大阪への出張中、一人で食べる晩御飯を求めて街を歩いた。永遠に続く天神橋筋商店街で「晩酌セット」の看板に惹かれて吸い込まれた。たしかビール2杯と串カツ6本で1,000円。箸を使わずに済んだことに驚いた記憶がある。

串カツの懐の広さに救われ続ける日々だ。

 

・・・

 

「前にあなたの日記を読んだことがあるよ」

千住を離れる人が不意にそう話す。

ふとしたきっかけでこのブログにたどり着いて、結構昔の日記まで読んでくれたとのこと。その日以来は読んでないんだけどね、と優しく付け加えた。

ありがとう。その日から先の日記は書いていなかったんだ。

常に「書きたい」と思っていて、でも書けない日々が続いていた。SNSに不定期で投稿される「書きたい」のpost。じゃあ書けばいいのに、という当然のレスポンス。

書きたい。それは本当にそう。

じゃあ書けばいいのに、それは本当にそう。

 

・・・

 

人の日記を読むのが好きだ。いくつかのブログを定期購読していて、更新されるたびに読んでいる。誰に向けられたわけでもない“生活のあらわ”を読むのは楽しい。

ZINEやリトルプレスで日記を出版する人も増えてきた。先日の文学フリマでは10冊近い日記文学を買った。もはや性癖にも近いものがある。

誰かの日記を読むことはあっても、誰かに日記を読まれることを意識したことはなかった。「読んだよ」と言われることで生まれる、これまであまり経験したことのない感情を大事に抱えてその日は帰った。

 

・・・

 

自分のことを書こうと思って書けない日々が続いていた。「千住の暮らし」を軸に据えると、流れるように文章が出てくる。

それなら、千住のことを書いていこう。千住の人たちと暮らし、働き、遊ぶ日々ならいくらでも書けそうだ。かといって、その軸を明確にすると、それはまた窮屈かもしれない。

あまり意識しすぎずに続けていこう。

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